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絶望の中から生まれた、小さな語り部たち

2026年8月8日

身体を動かせない日々の中、マッスーシーが手にした一本の鉛筆。そこから生まれた小さな語り部たちと、その作品が生まれた背景をご紹介します。

止むことのないドローンの音や、真夜中に響く爆音におびえながらも、明日のことを考え、今日という一日を丁寧に、精いっぱい生きていたある日、マッスーシーは、通りで強盗団に襲われました。


一命はとりとめたものの、立つことができなくなり、寝たきりの長い療養生活が始まりました。医師からは、大好きだったサッカーをもう一度することは難しいと告げられました。子どもの頃からずっとサッカーとともに生きてきた彼にとって、サッカーを奪われることは、大切な人を失うほどにつらいことだったそうです。


そして、彼はさらに深い傷を負うことになります。

彼を襲った強盗団は、その後、逮捕されました。ところが、その中に、マッスーシーが幼い頃からよく知っている人がいました。かつては、とても温厚で働き者だったそうです。その人は、長く続くガザ地区の封鎖と繰り返される攻撃の中で、愛する人たちを一人、また一人と失い、何度商売を始めても破壊されるという経験を重ねていました。立ち上がっては踏みつけられ、それでもまた立ち上がり、そしてまた失う。そんなことが繰り返されるうちに、その人自身の心も次第に崩れていき、やがて行方が分からなくなっていたそうです。幼い頃から温かな眼差しで見守ってくれていたあの人と、「被害者」と「加害者」として再会することになったマッスーシーは、深く傷つきました。


身体を思うように動かすこともできず、力なく横たわる日々。そんなある日、ヤスミンから一つの提案がありました。

「ガザの今を伝える絵を描いてみたら? 子どもたちに描いてもらうには心理的な負担が大きいから、大人が描いてみたら」


足は動かない。けれど、手なら動かせる。そうしてマッスーシーは、鉛筆を手に取りました。

描き始めたのは、猫たちでした。海の向こうを見つめる猫たち。戦火の中にある猫たち。。。
ガザの人々が目にしている日常を、猫たちの目を通して語る作品です。


最初の作品は、キャラクターのようなシンプルな線で描かれたものでした。

そこからヤスミンに「デッサン画のようなタッチにしてみたら?」「もう少し動きを出したらどう?」などと提案をもらいながら、何度も試作を重ねました。すると、絵は驚くほどの速さで変わっていきました。線に表情が生まれ、猫たちが動き始め、やがて、その身体の温度まで感じられるような作品になっていきました。


「作品には魂が宿る」と言うことがあります。

マッスーシーの作品の中には、一度見ただけなのに、何日たっても心に浮かんでくるものがあります。一見すると、かわいらしい猫たちです。けれど、彼らはただのかわいいキャラクターではありません。また、単なる戦争画でもありません。ガザに暮らす人々が見ているものを見つめ、言葉にできないものを、その小さな身体で静かに語っています。絶望の中で、動かせない足の代わりに動かした手から生まれた、小さな語り部たちです。


8月28日から30日まで、福岡・アクロス福岡で、マッスーシーの作品と、ハヤートナが支援するガザの寺子屋の写真を展示します。29日は11時からトークもあります。


猫たちが何を見つめ、何を語っているのか。
ぜひ、会いに来てください。


そして、困難な日々の中でも学び、遊び、笑い、懸命に今日を生きている子どもたちの姿にも、会いに来てください。


展示の詳細については、後日改めてご案内します。

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